営農の維持が難しくなってきた集落で
みんなで試行錯誤の日々
8割以上が水田のいすみ市で、長年、勤めの収入を農業機械につぎ込んで先祖からの農地を守ってきましたが、個別に農業を継続することが難しくなり、2004年にみんなで助け合う営農組合を立ち上げました。
環境を守るために減農薬栽培に取り組んできましたが、どうすれば持続可能な営農モデルを構築できるのか、試行錯誤しながら営農を続けてきました。
2012年に、市長が兵庫県豊岡市の成功事例を見て、コウノトリも住めるような地域づくりを目指して「自然と共生する里づくり」というプロジェクトを始めました。こうした方向には農業を維持し地域を活性化する可能性があるのではないかと考えて、2013年、私たちの営農組合は農薬や化学肥料を使わない米づくりに取り組みました。しかし、有機稲作の知識・技術もないまま取り組んだ結果は、草だらけで大変なことになり、除草作業に追われた上に、収量も3俵ほどという散々な結果となりました。
民間稲作研究所 稲葉先生の指導を受けた年から8〜9割の抑草に成功!
害虫被害もほとんどない状況に!
2013年の経験から、いすみ市では、有機稲作の研究・指導の第一人者でいらっしゃったNPO法人民間稲作研究所の故稲葉光圀先生に技術指導をお願いしました。1月に講演会を開催し、3月から4〜5回ほど圃場でも指導いただきました。稲葉先生のご指導で取り組んだ結果、その年参加したすべての農家で8〜9割の抑草に成功。ただしそのためには2〜3日に1回のチェックで住んでいた水位の管理を毎日やらなければならず、大幅に手間が減ったとまでは言えませんでした。しかしながら、害虫被害もほとんどないことに驚きました。オーガニック栽培にすることで天敵であるカエルやクモが明らかに増え、被害がなかったことを後で知りました。
有機に踏み切った結果、販売価格が大きく向上!
学校給食には有機JAS認証米をJAを通じて納品していますが、1kgあたり400円弱で買い取っていただいています。一方で自主流通で販売する場合には、機械乾燥のもので1kgあたり600円弱、天日干しのものに至っては1kgあたり650円で買っていただけるようになりました。日本航空のファーストクラスにも採用され、30tほど納品しました。
これから有機農業に取り組む方へ 〜有機農業には多面的な価値がある〜
各地域にはそれぞれの特性や課題がありますので、今まで有機農業が始まらなかったり、広がらなかったりしたのにも様々な理由があると思います。私は、有機農業に取り組む中で、有機農業には社会的な意義がある、公共的な価値があることを実感しています。安全な食品の提供、子どもたちの健全な成長への貢献、環境・生物多様性の保全・再生、地球温暖化の防止など、本当に多面的な価値があることだと考えています。
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