人生の紆余曲折からたどり着いた、マリエさんの現在(いま)
女性ファッション誌の専属モデルやタレント活動を経て、2011年にアメリカ・ニューヨークのファッションの名門校、パーソンズ美術大学へ留学。
2017年、晴れて自身がデザイナー兼会社代表を務めるアパレルブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS (パスカルマリエデマレ)」デビューを実現させる。ブランドを通じサステナビリティを発信し、2020年から環境省の森里川海アンバサダーも務める。
自ら明かした「摂食障害」と闘った辛い過去
そんなマリエさんには、長年病に悩まされた辛い過去がある。自身の公式SNSで過去の自分を告白したのは2021年の出来事。
モデル業からタレント活動まで人気絶頂で忙しい毎日を送る10代の頃、活躍の陰にはその状況に苦しむ世間が知らないマリエさんがいた。いつしか自分自身のコントロールも難しくなり…深刻な摂食障害や不眠に苦しんだ。このままでは自分が壊れてしまう。限界を感じ、海外留学を決意したという。
「ニューヨークの暮らしは、日本より肌に合い楽に感じました。大好きなファッションと向き合える環境で自分を見つめなおすうちに徐々に元気を取り戻し、自分の心と体を大切にしようとまずは食生活の改善に取り組みました。無農薬や自然農法の野菜を選ぶうちに、環境問題にも関心が向くようになって。そして、自分の体にプラスになることが、地球の健康にもつながっているという気づきにたどり着いたんです。」
NY留学時代のマリエさん
10年以上にも渡る摂食障害との闘い。マリエさんは自らの努力により、克服した。
「あえて自ら過去のことを公表したのは、過去の自分のように辛い思いをする人を一人でも多く救いたいと思ったからです。
私の経験からシェアできることを発信することによって、少しでも力になれたら…。オンラインサロンも開設し、情報交換や交流の場としても役立ってほしいと願っています。」
食べることを「制限」するのではなく、「選択力」を磨く
「たとえばダイエットをしたい方にとって、甘いものや炭水化物を食べることに罪悪感や抵抗を感じるかもしれません。でも本来大切なのは、食べる“種類”や“食べ方”を変えること。
わたしもスイーツは大好きです!食べたいときは、精白糖が使われたスイーツは控える。天然甘味料で作られた商品を“選択”する。
炭水化物は、白米よりも玄米を選んだり、干し芋を食べたり。これらは、血糖値の上昇もゆるやかな食材で、体にとってやさしい“選択肢”。
そして、その選択肢の背景には、必ず作り手がいるということ。誰がどのような思いで作っているのか?そこに信頼とリスペクトがあるかどうか。買い物をするときは、“ストーリーが見える商品を選ぶこと”を大事にしています。洋服を買うときも、同じです。」
大好きなお店のヴィーガンドーナツ
自然妊娠でさずかった尊い命。
2022年10月、第一子女児を出産し母になったマリエさん。
「摂食障害で悩まされていた20代前半のころ、婦人科系もバランスを崩し、医師から『将来、妊娠することは難しいでしょう』警告でなく、断言されてしまうほどに、当時の私の体は心も体もどん底の状況でした…。」
だからこそ、妊娠という出来事は一層喜びが大きかったことだろう。
現在、生活の拠点をメキシコにも持つマリエさんは、初めての出産をメキシコで迎えた。愛娘の名前には、スペイン語で「波」を意味する「Ola(オラ)」と命名したことも公表している。
愛娘のOlaちゃん
ブランドを通じ、消費者の選択肢をすこしずつシフトしていきたい
「自分の健康と地球の健康はつながっている。より健康的で、循環型のライフスタイルのヒントやメッセージを、ファッションを通じて届けていきたい。そんな思いが、ブランド立ち上げの原点です。」
ブランドの運営も会社経営も、サスティナブルなあり方を日々試行錯誤している。
「ブランド設立初期のころ、アパレル業界が地球に及ぼす環境負荷や労働者への健康被害、そして児童労働といった社会問題を知り…その実態に驚愕したんです。」
衣料品の代表的な素材の1つであるコットンの原料は、畑で栽培される「綿花」。綿花は農薬使用量最大の農作物といわれ、地球環境へ及ぼす影響と綿花労働者が農薬の中毒で苦しむ深刻な被害が存在している。
「コットンを使用するなら、限りなくオーガニックコットンを選びたい。かつ、トレーサビリティの確保も重視しています。
1番の理由は、児童労働をなくしたいということ。世界生産量の約8割は、インドなど発展途上国で生産されていて…例えば、綿花の受粉作業。農薬を使う綿花畑では、雄しべと雌しべを受粉させるという作業を子どもたちが1つ1つ手作業で行うんです。大人たちが農薬散布した畑で、土の上にひざまづいて、素手で…。」
農薬による健康被害リスクに加え、長時間労働を強いられ学校に通うこともできない。児童労働は、子どもたちの未来を奪ってしまう…。
「商品を通じて、素材の魅力だけでなく、選ぶ理由を伝えていく。そうすることで、消費者の選択肢を少しずつ変えていきたい。」
「将来的には、綿花や麻といった原料の栽培にも関わっていきたいと思っています。」
コットンの原料である「綿花」
今日の選択と、未来のつながり
「まずは、オーガニックを選ぶ消費者が増えること。消費者の意識やニーズが変われば、企業や社会のあり方をかえていく力につながるはず。」
2023年、ブランドは6年目に突入する。
母になりますますパワーアップするであろうマリエさんの今後の活躍に、これからも注目していきたい。
カンファレンスへの登壇模様
PASCAL MARIE DESMARAIS
https://pmdonline.jp/